開発原則はなぜ必要なのか?その背景と歴史をわかりやすく解説
開発原則はなぜ生まれ、どのように発展してきたのか?本記事ではソフトウェア開発の進化とともに形成されてきた設計原則の背景と歴史を丁寧に解説します。
ソフトウェア開発には多くの「原則」が存在します。DRY、KISS、SOLID、YAGNIなどの開発原則は、現代の開発者にとって常識のように語られますが、なぜこれらの原則が必要とされるのでしょうか?
また、それらはどのような背景や歴史を経て生まれてきたのでしょうか?
この記事では、「開発原則」が生まれた背景と、それが現代の開発に与えている意味について、歴史的な文脈とともに解説します。
そもそも「開発原則」とは?
開発原則とは、ソフトウェアを設計・実装・運用する上での基本的な考え方やガイドラインのことです。
これらの原則は、「どう設計すればバグが起きにくいか」「どう書けば保守しやすいか」といった、暗黙の知見を明文化したものです。
なぜ原則が必要とされるのか?
1. ソフトウェアが複雑化したから
ソフトウェア開発の初期は、数百行のコードで構成される単純なプログラムが主流でした。
しかし、今日のソフトウェアは何十万、何百万行にもおよび、複数の開発者によって、数ヶ月から数年かけて構築されます。
このような巨大で複雑なシステムを安全かつ効率よく構築・保守するためには、共通のルールや考え方が不可欠です。
それが「原則」の役割です。
2. 同じ問題が繰り返し発生したから
過去の開発現場では、以下のような問題が何度も繰り返されてきました:
- 同じコードがあちこちに散らばり、修正漏れが発生
- 実装はできているが、設計が複雑すぎて誰も理解できない
- 新しい機能を追加するたびに他のコードが壊れる
これらの経験が蓄積された結果、「こうすれば避けられる」という知恵が原則として体系化されていったのです。
3. チーム開発・大規模開発が一般化したから
現代の開発は個人ではなく、チームで行われるのが当たり前です。
チームで開発する以上、共通認識・共通言語としての原則が必要です。
原則を知っている開発者同士であれば、設計意図を言語化せずとも共有できます。
また、原則をベースにコードレビューや設計議論ができるようになります。
開発原則の歴史:いつ、どのように生まれたのか?
1970年代:ウォーターフォールと構造化設計の時代
この時代には、設計工程を文書ベースで厳密に管理する「ウォーターフォールモデル」が主流でした。
構造化設計、トップダウン設計などの概念が登場し、「設計の手順を明文化する」動きが始まります。
1980年代:オブジェクト指向の登場
ソフトウェアの複雑性に対抗するアプローチとして登場したのがオブジェクト指向(OOP)です。
この時期に「カプセル化」「継承」「ポリモーフィズム」などの基本概念が定着しました。
設計原則の必要性がより明確になり、現代につながる思考の土台が築かれました。
1990〜2000年代:アジャイルとXP(エクストリームプログラミング)
この時代になると、変化の激しい開発環境に対応するため、軽量な手法が求められるようになります。
XP(エクストリームプログラミング)やScrumが登場し、「テスト駆動開発(TDD)」や「ペアプログラミング」が広まります。
この中で、YAGNIやDRY、KISSといった原則が明文化され、多くの開発者に共有されるようになりました。
現代:設計の多様化と原則の再評価
マイクロサービス、関数型プログラミング、DDD(ドメイン駆動設計)など、新しい開発アーキテクチャが次々に登場しています。
一方で、「原則そのものが目的化していないか?」という再評価の動きも強まっています。
今や開発原則は、守るべきルールというよりも、**「使いこなすべきツール」**として捉える時代になってきています。
まとめ:原則は「経験の結晶」だが、状況に応じて選ぶべき
開発原則とは、過去の失敗や成功から得られた知見の集大成です。
それを知っていることで、わたしたちは一人でゼロから学び直す必要がなくなります。
ただし、原則に縛られすぎても本末転倒です。
重要なのは、それぞれの原則が「どんな意図で生まれたか」を理解し、状況に応じて使い分けられることです。
開発原則は、ソフトウェア設計における「羅針盤」です。
目的地(ユーザーに価値を届けること)を見失わないためのガイドとして、原則を味方につけていきましょう。

編集部