『チーム・ジャーニー』に学ぶ:チームは“旅”であり、信頼で育つ
『チーム・ジャーニー』は、チームがうまくいかない理由とその乗り越え方を旅に例えて描いた一冊です。信頼、対話、心理的安全性――ソフトウェア開発の現場にも通じる実践的なヒントを解説します。
はじめに:チームの「違和感」に名前をつける本
「なんだか、チームの雰囲気がぎくしゃくしてる」
「個々は優秀なのに、なぜかうまく連携できない」
そんなモヤモヤを抱えたとき、
**『チーム・ジャーニー』**は、チームの“今いる場所”と“これから進む方向”を見せてくれる一冊です。
チーム・ジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくりあげる
チームは“最初から仲良し集団”じゃない
チームは「旅」をする存在
著者・清水 佑紀子さんは、チームを**「旅をする存在」**として描きます。
出発点では不安を抱え、衝突や葛藤を経て、徐々に信頼や共創に向かっていく――
それはまるで、登山のようなプロセスです。
『チーム・ジャーニー』の7つのステージ
それぞれのステージとチームの状態
ステージ | チームの状態 | キーワード |
---|---|---|
1. 不安と期待 | 何者かわからず探り合う | 安心感の欠如 |
2. 警戒と衝突 | 自分を守る言動が増える | 自己防衛 |
3. 揺れ動く信頼 | 相手への理解が深まり始める | 対話・気づき |
4. つながりの芽生え | 認め合いが生まれる | 心の余白 |
5. 自分ごとの感覚 | 役割や責任を自覚 | 貢献欲求 |
6. チームへの信頼 | 個と全体のバランスが取れる | 協調 |
7. 共創と変化 | 変化にしなやかに適応できる | 学び合い・創造 |
なぜこの本は開発者にとっても大切なのか?
ソフトウェア開発は人と人の協働
どれだけ技術が高くても、
信頼がなければ、チームは機能しない。
この本は、チームがつまずく“感情の段差”に丁寧に向き合ってくれます。
「あるあるな違和感」に言葉を与えてくれる
- 「あの人、全然発言しないけど…?」
- 「指摘したいけど、場の空気が怖い」
- 「なんとなく遠慮してしまう」
こうした“言語化しづらい違和感”に構造と名前を与えてくれることが、本書の大きな価値です。
心理的安全性は「状態」ではなく「関係性」
意見を言える空気、ではなく関係の土台
「心理的安全性」があればうまくいく――
そう単純に考えてしまう人も多いですが、本書はその前提を問い直します。
「意見が違っても、関係性は壊れない」
この安心感こそが、本質的な心理的安全性です。
チームビルディングの落とし穴:よくある失敗パターンとは?
どんなチームでも、「うまくいってない理由」に気づくのは難しいものです。
でも実は、多くのチームが似たようなパターンでつまずいていることも事実。
ここでは、『チーム・ジャーニー』のステージごとにありがちな“罠”を、
**「見え方/チームの声/対処のヒント」**という切り口で整理してみましょう。
ステージ別:チームビルディングの失敗パターン早見表
ステージ | よくある誤解・落とし穴 | チームに起きる現象 | 対処のヒント |
---|---|---|---|
① 不安と期待 | 「静か=順調」だと思い込む | 表面的に和やかだが、発言が少ない | 期待や目的を明文化し、共有する |
② 警戒と衝突 | 衝突=悪と捉えて回避する | 表面的には平和でも、不満が蓄積 | 衝突は成長の兆し。対話の場を設ける |
③ 揺れ動く信頼 | 合意を急ぎすぎる | 「わかったつもり」で前に進みがち | 誤解のまま進まず、“ズレ”を確認 |
④ つながりの芽生え | 「仲がいい=チーム力」だと勘違い | 議論や挑戦が減り、内向きになる | フィードバックや外部視点を導入する |
⑤ 自分ごとの感覚 | 「できる人に任せればいい」風潮が残る | 一部の人に負荷集中、責任感の偏り | 役割と期待をチーム内で明確に共有する |
⑥ チームへの信頼 | 「うちはもう大丈夫」と思い込む | 課題提起がしづらくなり、惰性が生まれる | 定期的な振り返りと心理的なリセットを意識する |
⑦ 共創と変化 | 安定を優先し、変化を恐れる | 挑戦が停滞し、学習が鈍化する | 安心を保ちつつ、外への接続や試行を促す |
この表の使い方:チームの現在地を“セルフチェック”
- 「最近の自分たち、⑤っぽいかも…?」
- 「あの時の衝突、②だったんだな」
- 「⑥に入りかけてるけど、ちょっと停滞感あるかも」
そんなふうに、定期的なふりかえりの視点として活用できます。
ステージは固定ではなく、行きつ戻りつするのが自然。
大事なのは、「いまの状態に気づいて対話すること」です。
『チーム・ジャーニー』を読むタイミング
こんなときにおすすめ
- チームの雰囲気が重い/ピリついている
- 新しいチームを立ち上げたばかり
- ファシリテーションやリーダーシップに悩んでいる
まとめ:チームづくりに正解はなく、対話がすべて
『チーム・ジャーニー』は、テクニックを教えてくれる本ではありません。
けれど、チームという「人のかたまり」をどう育てていくか、
その旅に寄り添ってくれる“地図”のような本です。
迷ったとき、つながれないと感じたとき、
ぜひこの一冊を手に取ってみてください。

編集部