ウォーターフォール開発の起源と課題:なぜ“直線的な開発”が広まったのか?
ウォーターフォール開発は、なぜ生まれ、どのように普及したのか?本記事では、その誕生背景と構造的な課題を整理し、現代の開発手法と対比しながらわかりやすく解説します。
「ウォーターフォールは古い」
「もう時代遅れでしょ?」
そんな声を聞くこともありますが、実はウォーターフォール開発には、**それが生まれた“必然”と“背景”**があります。
そして今もなお、現場によっては採用されている手法でもあります。
本記事では、ウォーターフォールの起源とその構造的課題について、歴史をひもときながら整理します。
そもそもウォーターフォールとは?
ウォーターフォール開発は、工程を「上から下へ」と順番に進めていくモデルです。
各工程が完了してから次に進むという構造が、**“水が流れ落ちるように”**見えることから、その名がつきました。
起源は「ウォーターフォールとは書いてない論文」?
1970年、米国のWinston W. Royceが発表した論文
**“Managing the Development of Large Software Systems”**が、
ウォーターフォールモデルの原型とされています。
しかし実はこの論文、「この方法には問題がある」として紹介されたものでした。
💡 Royce自身は、フィードバックループのない直線的工程に懐疑的だった
にもかかわらず、その図が「わかりやすかった」こともあり、
図だけが一人歩きして“正解モデル”として普及してしまったのです。
なぜ広まったのか?──背景にある組織構造と時代性
背景要因 | 内容 |
---|---|
🏛 大規模な委託開発の増加 | 受発注関係では「いつ何が終わるか」を明確にする必要があった |
📜 文書ベース文化の強さ | すべてを事前に文書化し、契約の形で交わす手法が重視された |
📦 ハードウェア開発との類似 | 設計変更が難しいハードウェアと同様の「事前設計重視」が引き継がれた |
ウォーターフォールの構造的な課題
❌ 1. 変更が前提になっていない
-
一度決めた要件や設計に戻るのが難しい
→ 柔軟な対応が困難
❌ 2. テスト工程が遅いため、不具合の発見が遅れる
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“動くもの”が最後にしか出てこない
→ 手戻りコストが爆発しやすい
❌ 3. 顧客の本当のニーズを反映しづらい
-
最初の要件定義がすべての土台
→ 実際に触れて初めてわかる“本当の要望”が反映されにくい
❌ 4. チーム間の分断が生まれやすい
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工程ごとに担当が変わる
→ コミュニケーションの分断、責任の所在の曖昧化
それでも今もウォーターフォールが使われる理由
理由 | 解説 |
---|---|
🔒 厳密な契約や予算管理が必要な案件 | 官公庁や公共系プロジェクトなど |
🧭 要件が明確かつ変更が少ない場合 | 過去の類似実績がある、安定した領域 |
🤝 組織やステークホルダーが多く調整が大変 | 計画重視の進行が求められる |
まとめ:ウォーターフォールを「否定する」のではなく「理解する」
ウォーターフォールは、単なる“古いやり方”ではありません。
それは、
- 当時の技術的・組織的制約から生まれた現実解であり、
- 現代のアジャイルやDevOpsの対極にある“構造の思想”でもあります。
理解したうえで選ぶこと。
そして、必要に応じて“混ぜる”こと。
その柔軟さこそが、今の時代に求められる設計力なのかもしれません。

編集部