『リーンソフトウェア開発』とは?ムダを減らし、価値を最大化する開発思考

『Lean Software Development』は、製造業のリーン思考をソフトウェア開発に応用した名著です。ムダの排除、学習の重視、チームの尊重など、その7つの原則を丁寧に解説します。

「なんでこんなに作ってるのに、進んだ気がしないんだろう?」

そんなふうに感じたことはありませんか?

それは、コードや機能の“量”ではなく、価値につながる動きが少ないからかもしれません。

そんな課題に答えてくれるのが、Mary & Tom Poppendieck による名著、『リーンソフトウェア開発』です。


Leanって、そもそも何?

Lean(リーン)はもともと**トヨタ生産方式(TPS)**に由来する考え方で、製造現場において「ムダを徹底的に排除し、価値ある流れを作る」ための思想でした。

この考え方をソフトウェア開発に応用したのが『リーンソフトウェア開発』です。

リーンソフトウエア開発~アジャイル開発を実践する22の方法


Lean Software Developmentの7つの原則

本書の中心は、次の「7つの原則」に集約されます。

原則意味
① ムダを排除する無意味な仕様・作業・待ち時間を削減
② 学習を強調する知識の獲得と試行錯誤を重視する文化
③ 決定を遅らせる早すぎる決定を避け、必要になってから判断
④ 素早く提供するフィードバックを得て、改善を重ねる開発
⑤ チームを尊重する自律性・スキル・判断を信じる
⑥ 品質を組み込むあとから直すのではなく、最初から品質設計
⑦ 全体を最適化する局所ではなく、価値の流れ全体を改善対象にする

開発現場にどう活かせるか?

✅ 不要なドキュメントを書いていませんか?

→ 「ムダの排除」の視点から見れば、「本当に使われるのか?」と問い直す余地があるかもしれません。

✅ すぐに決めすぎていませんか?

→ 設計の選択肢を早く絞るのではなく、「あとから柔軟に選べる余地」を残す設計が推奨されます。

✅ 価値が見える“流れ”はできていますか?

→ チケットの進捗ではなく、顧客にとっての価値が届くまでのプロセスを見直す視点が求められます。


AgileやDevOpsとどう違うの?

手法共通点主な違い
Agile顧客価値を重視/反復とフィードバックプラクティスが多く明示的(スクラムなど)
DevOpsフローの最適化/自動化と協調開発〜運用までの技術的実践に特化
Lean原則重視/文化や思考法がベースソフトウェア開発全体の思考の土台

Leanは、AgileやDevOpsよりも**上位の思想として機能する「考え方のレイヤー」**と捉えると理解しやすいです。


どんな人におすすめ?

  • 「現場の仕事量は多いのに、成果が見えない」と感じる人
  • プロセス改善をチームで考えたいリーダー
  • アジャイルやDevOpsの“次の軸”を探している人

まとめ:ムダを減らすのは、チームを尊重することでもある

Leanは、「効率のために削る」思想ではありません。

価値のあることに集中するために、ムダをやめるという姿勢です。

そして本書は、その姿勢をチーム全体で持ち、日々の判断に活かすための道しるべとなります。

リーンソフトウエア開発~アジャイル開発を実践する22の方法

編集部

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