Lean開発とは?YAGNI・KISS・DRYを貫く「ムダを省く」思想を解説
Lean開発はムダを徹底的に省く開発思想であり、YAGNI・KISS・DRYといった原則を土台にしています。本記事ではLeanの成り立ちと、開発における実践ポイントを解説します。
「なるべく速く、品質を保ちながら、ユーザーに価値を届けたい」
そのために、ソフトウェア開発の世界で生まれたのが Lean開発(Lean Software Development) という思想です。
Lean開発は、製造業の「リーン生産方式(Lean Production)」から影響を受けたもので、ムダを省き、価値を最大化することを目的とした開発スタイルです。
この記事では、Lean開発の考え方と、それを体現するYAGNI・KISS・DRYの関係をわかりやすく解説します。
Lean開発の基本思想
Lean開発の本質は、**「ムダをなくし、価値のあることに集中する」**ことにあります。
これは単に効率化を目指すのではなく、「顧客にとっての価値」を軸に判断するという点で本質的です。
Lean開発の7原則(Mary & Tom Poppendieckによる)は以下の通りです:
- ムダをなくす
- 学習を強調する
- 決定を遅らせる(必要になるまで決定しない)
- できるだけ早く提供する
- チームを尊重する
- 品質を作り込む
- 全体を最適化する
LeanとYAGNI・KISS・DRYの関係
Lean開発の原則は、私たちがよく耳にするYAGNI・KISS・DRYと密接に関わっています。
それぞれの原則が、Leanのどの考えと結びつくのか見ていきましょう。
✅ YAGNI(You Aren’t Gonna Need It)
-
意味:将来必要になるかもしれない機能は、今は実装しない
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Leanとの関係:
→「決定を遅らせる」「ムダをなくす」に直結
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実践のコツ:
- 要件にない機能は今は作らない
- 本当に必要になるまで保留する勇気を持つ
✅ KISS(Keep It Simple, Stupid)
-
意味:設計はできるだけシンプルに保つべき
-
Leanとの関係:
→「全体の最適化」「品質の作り込み」につながる
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実践のコツ:
- 不要な抽象化を避ける
- チーム全員が理解できる構造にする
✅ DRY(Don’t Repeat Yourself)
-
意味:同じコードや情報は重複させず、1箇所に集約する
-
Leanとの関係:
→「ムダの排除」「品質の作り込み」に関係
-
実践のコツ:
- 共通処理は関数やモジュールに切り出す
- 一貫性と変更容易性を意識する
Lean的な判断基準:価値とムダを見分ける
Leanでは、次のような7つの「ムダ」があるとされています:
ムダの種類 | 例(ソフトウェア開発の場合) |
---|---|
過剰な機能 | 使われない設定や機能(=YAGNI違反) |
手戻り | 要件の誤解・仕様変更によるやり直し |
作業の待ち | レビュー待ち、意思決定の遅延 |
移動 | 情報を探し回る、知識の断片化 |
過剰処理 | 必要以上のエラーハンドリング |
在庫 | 未リリースのコード/未使用の設計 |
欠陥 | バグや品質不足による修正コスト |
これらを減らすことで、チームの力を「本当に価値のあること」へ集中させることができます。
Lean開発を実践するヒント
- 機能追加の前に「これは価値があるか?」を自問する
- 「早すぎる最適化」は避ける(Premature Optimization is the root of all evil)
- 学習や改善のサイクル(振り返り、リファクタリング)を大切にする
- なるべく早く小さくリリースし、ユーザーのフィードバックを受ける
まとめ:Leanは「思考の筋トレ」
Lean開発は単なる開発手法ではなく、価値に集中するための思考習慣です。
その中核にあるYAGNI・KISS・DRYは、機能や設計に対して「これは本当に必要か?」「もっとシンプルにできないか?」と問いかけるための原則です。
これらの原則を盲目的に守るのではなく、Lean的な価値判断をもとに、状況に応じて賢く使うことが重要です。
Leanは、無駄を削ぎ落としたところにある本質を見抜く、開発者のための“思考の筋トレ”なのです。

編集部