オブジェクト指向の誕生とその背景:なぜ「モノ」で考える発想が生まれたのか?
オブジェクト指向はなぜ生まれたのか?その背景には、プログラムの複雑化や人間の思考様式が深く関わっています。本記事では、オブジェクト指向の誕生と進化の歴史をやさしく解説します。
「オブジェクト指向って、結局なんのためにあるの?」
そう疑問に思ったことはありませんか?
単なる技術用語ではなく、人間のものの見方に近い“考え方”として生まれたのがオブジェクト指向です。
この記事では、その誕生の背景から、なぜこの考え方が求められるようになったのかをひもといていきます。
プログラムの規模が拡大し、「構造の限界」が見えた
🧱 初期の構造化プログラミングの時代
1970年代までは、関数や手続き(プロシージャ)を使って、コードを整理するのが主流でした。
この「構造化プログラミング」は、スパゲッティコードを防ぐために重要な進化でした。
でも──
プロジェクトが大規模になると、
- 関数同士の依存関係が複雑になりすぎる
- グローバル変数の氾濫
- 状態管理が煩雑でバグが埋もれる
という構造の限界が見えはじめたのです。
人間の「ものの見方」に近づけようとした発想
この課題を解決するために注目されたのが、
人間が現実世界を理解するときの“単位”にヒントを得た設計思想──それがオブジェクトです。
💡「車」「ユーザー」「注文」など、実世界に存在する“名詞”ベースでモデリングする
✅ オブジェクトの特徴
- 状態(プロパティ)と振る舞い(メソッド)をひとまとめにする
- 外部とは“インターフェース”を通じてやりとり
- 変更が局所的にすむ(カプセル化)
この設計によって、理解しやすく/拡張しやすく/保守しやすい構造をつくろうとしたのです。
SmalltalkとSimula:オブジェクト指向の始祖たち
オブジェクト指向の起源は、1960年代の**Simula(シミュラ)**という言語にあります。
これは「シミュレーションのための言語」として作られ、
- 実体(=オブジェクト)を登場人物として扱い
- そのふるまいや状態を持たせられるようにした
という画期的なものでした。
その後、1980年代に登場したSmalltalkによって、
オブジェクト指向が思想として完成し、教育・GUI設計の文脈で広まりました。
なぜ「オブジェクト」という考え方が広がったのか?
背景 | 内容 |
---|---|
📏 ソフトウェアの大規模化 | 関数ベースの構造に限界が見え始めた |
🧠 人間の理解しやすさ | 「モノ+ふるまい」のモデルが直感的 |
🔧 保守性の高さ | 一部の変更が他に波及しにくい設計が可能 |
🔄 拡張への強さ | 新しい“オブジェクト”を足すことで対応できる |
オブジェクト指向が登場して変わったこと
-
「設計」の重要性が一気に高まった
→ システム全体の構造を「どう分けて、どう関係づけるか」が主戦場に
-
“表現の粒度”が上がった
→ プログラムを「部品の集合」として考えられるようになった
-
再利用・共通化・抽象化といった視点が当たり前になった
まとめ:「オブジェクト指向」は“構造の進化”であり“思想の転換”
オブジェクト指向は、単なる技術の流行ではありません。
それは、
- 巨大化するソフトウェアの構造的課題に対する解決策
- 人間の思考に沿ったモデルへの進化
- 再利用と保守を前提とした思想の転換
でもあります。
今もなお「なぜオブジェクトで考えるのか?」を問い直すことは、
ソフトウェア設計の本質を考えることにつながります。

編集部