DRY原則とは?重複を排除するコード設計の基本と実践方法
DRY原則(Don't Repeat Yourself)は、コードの重複を避けることでソフトウェアの保守性・可読性を高める重要な開発原則です。本記事では、その概要と実践方法、注意点までを丁寧に解説します。
ソフトウェア開発において、同じコードの繰り返し(重複)はバグや保守性の低下を招く大きな原因の一つです。
その問題を解決する設計思想として知られるのが、**DRY原則(Don't Repeat Yourself)**です。
この記事では、DRY原則の意味や背景、具体的な実践方法、そしてよくある落とし穴までをわかりやすく解説します。
DRY原則の概要
DRYとは何の略か?
DRYとは、"Don't Repeat Yourself"(自分自身を繰り返すな)の略です。
つまり、「同じ情報や処理を、コード上で複数回繰り返してはならない」という考え方です。
この原則は、単なるスタイルの話ではなく、保守性・一貫性・効率性のための重要な思想です。
提唱者と背景:『The Pragmatic Programmer』とは
DRY原則は、Andy Hunt と Dave Thomas が1999年に出版した書籍『The Pragmatic Programmer』の中で提唱された概念です。
彼らは「すべての知識は、明確で一意な表現を持つべき」と主張し、重複はバグの温床であるとしています。
DRY原則が重要視される理由
コードの重複が引き起こす問題
コードをコピー&ペーストで再利用すると、以下のような問題が発生しがちです。
- バグが発生した際、全ての重複箇所を修正しなければならない
- 一箇所の修正漏れが、システム全体の不具合を引き起こす
- コードの可読性が悪化し、チーム内での認識ずれが起きやすくなる
DRYがもたらす3つのメリット(保守性・可読性・バグ抑止)
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保守性の向上
→ 一箇所を直せば全体に反映される設計は、運用面でも安全です。
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可読性の向上
→ 似たようなコードが何度も出てこないため、コードの意図が読み取りやすくなります。
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バグの予防
→ 一貫性を保ちやすいため、ロジックの不整合やバグを未然に防げます。
DRY原則の実践方法
1. 関数・メソッドの再利用
繰り返し出てくる処理は、関数やメソッドとして切り出しましょう。
引数で動作を変えられるようにすると、さらに再利用性が高まります。
2. クラスやモジュールの抽象化
類似した機能や構造を持つ複数のコードは、クラスにまとめたり、モジュールとして再利用できる形に整理することが重要です。
3. テンプレートやライブラリの活用
同じようなHTML構造やエラーメッセージなどは、テンプレートやユーティリティ関数として共通化しましょう。
DRY原則のよくある誤解と落とし穴
抽象化しすぎてコードが複雑になるリスク
DRYを意識しすぎて、あらゆる処理を共通化すると、読みにくく修正しづらい抽象コードになることがあります。
DRY適用の“タイミング”が早すぎる問題
最初からすべてを共通化しようとすると、要件変更に弱くなる可能性も。
「これは繰り返しそうだ」と確信が持てた段階で、共通化に着手するのが理想です。
密結合が進むことで柔軟性を損なうリスク
複数の処理が一つの関数に集約されると、それぞれのモジュールの独立性が失われ、テストや修正が難しくなる恐れがあります。
DRY原則の適用におけるベストプラクティス
WETとのバランスをどう取るか
WET(Write Everything Twice)という言葉もあるように、あえて重複させることで明快になるケースも存在します。
単純な「原則の適用」ではなく、文脈に応じた判断が大切です。
チームでDRYを意識する方法
コードレビューの際に、**「これはDRYの観点からどうか?」**と問いかけるだけでも意識が変わります。
また、DRY違反が発生しやすい領域を事前に共有しておくと、未然に防ぐ効果があります。
まとめ:DRY原則を使いこなすために
DRY原則は、ソフトウェア開発における保守性・効率性・可読性を高める基本の考え方です。
ただし、原則にとらわれすぎることなく、現場の文脈や柔軟性を重視する姿勢が重要です。
「繰り返しは悪」と一律に捉えるのではなく、目的と効果を見据えた設計判断を心がけましょう。

編集部