開発原則の失敗パターンとは?やりすぎが招く落とし穴とその回避法
DRYやKISSなどの開発原則は便利な指針ですが、過剰適用は逆効果になることも。本記事ではよくある失敗パターンとバランスよく原則を使いこなすためのヒントを解説します。
開発原則の失敗パターンとは?やりすぎが招く落とし穴とその回避法
「良い設計をしたい」と思うすべての開発者にとって、DRY、KISS、SOLIDといった設計原則は心強い指針になります。
しかし、どんなに優れた原則であっても、やりすぎれば逆効果です。
本記事では、実際に現場で見られる「原則の過剰適用による失敗例」と、原則をバランスよく使いこなすためのヒントを紹介します。
原則が“毒”になる瞬間とは?
設計原則はあくまでガイドラインです。
それを“ルール”や“正義”のように扱うことで、かえって設計が歪んでしまうことがあります。
以下に代表的な「やりすぎパターン」を紹介します。
DRYのやりすぎ:過剰な抽象化地獄
よくある失敗
- 無理やり共通化してしまい、実装の意図が読めなくなる
やtype
が乱立し、修正時の影響範囲が読めないif
- 一箇所の変更が他にも波及し、安心して触れないコードになる
例
def process(item, type): if type == "A": # 処理A elif type == "B": # 処理B elif type == "C": # 処理C
対策
- *「繰り返し回数が3回以上」**などの基準で共通化の判断をする
- 読む人が直感的に理解できることを優先する
KISSのやりすぎ:重複を恐れず書きすぎる
よくある失敗
- 似たような処理が複数あり、修正が面倒に
- コピペ中心になり、コードの整合性が保てない
- KISSを言い訳にして「設計しない」選択をしてしまう
対策
- 最初はシンプルでも、3回以上似たコードが出てきたら見直す
- KISSは“簡単に”ではなく“単純にしてわかりやすく”という意味だと意識する
SOLIDのやりすぎ:設計が先行しすぎる
よくある失敗
- 単一責任を意識しすぎて、1つの処理に5クラス使う
- 「とりあえずインターフェースを切る」が目的化する
- 実装が伴っていないのに層だけが増えていく
対策
- 小規模・中規模プロジェクトではSOLIDを“全部守る”必要はない
- 必要に応じて徐々に適用する“漸進的設計”を意識する
原則の過剰適用が生まれる理由
- 原則を「正解」だと思い込む
- 書籍や講座を鵜呑みにし、現場への適用を考慮しない
- “守った方がかっこいい”という思考の誘惑
原則は「守るもの」ではなく「使いこなすもの」
設計原則はあくまで設計判断を助けるための視点です。
- 状況に応じて“あえて守らない”判断も必要
- チームのスキルレベルや開発フェーズによっても適用の仕方は変わる
- 原則同士が矛盾する場合もある(DRY vs KISS など)
バランス感覚を育てるためにできること
- 1つの原則に固執せず、複数の視点で設計を見る習慣をつける
- 「なぜその原則を適用したか?」を言語化して説明できるようにする
- 定期的に過去のコードを振り返ることで、設計判断をアップデートする
まとめ:原則は“答え”ではなく“問いのヒント”
設計原則は、私たちに「このコードは読みやすいか?」「今後の変更に強いか?」と問いかけるための道具です。
大切なのは、「原則を守ったかどうか」ではなく、「それが設計として良かったかどうか」です。
失敗を通して原則の意味を理解し、バランス感覚を育てることが、優れた設計者への第一歩です。

編集部