ソフトウェア設計原則一覧まとめとその使いどころ【DRY・KISS・SOLIDなどを体系的に解説】
ソフトウェア設計に欠かせない原則を一覧で体系的にまとめました。DRY・KISS・SOLIDなどの定義や役割、使いどころを初心者にもわかりやすく解説します。
ソフトウェア開発において「良い設計」とは何か?という問いに答えるため、世界中で共有されてきたのが「設計原則」です。
これらの原則は、保守性・再利用性・拡張性といった品質を高めるための指針となります。
本記事では、代表的な設計原則を体系的に整理し、それぞれの使いどころと実践のヒントを紹介します。
設計原則とは何か?
設計原則とは、ソフトウェアの構造や設計を行う上での「判断基準」や「ガイドライン」です。
それぞれの原則には目的があり、適切な場面で適用することで、コードの品質を大きく向上させることができます。
設計原則の分類と主な目的
分類 | 主な原則 | 主な目的 |
---|---|---|
シンプルさ | KISS、YAGNI | 過剰設計を防ぎ、理解しやすくする |
再利用性 | DRY、モジュール化 | 重複を避け、共通化と保守性を高める |
拡張性・柔軟性 | SOLID原則 | 将来の変更に強い設計を実現する |
安全性・安定性 | デザイン・バイ・コントラクト、フェイルファスト | バグを早期発見しやすくする |
代表的な設計原則とその使いどころ
1. DRY(Don't Repeat Yourself)
定義:同じことを繰り返さない。
目的:重複を排除し、単一の情報源に集約する。
使いどころ:似た処理や構造が複数箇所にあるとき、共通関数や抽象化を検討する。
2. KISS(Keep It Simple, Stupid)
定義:設計や実装はできるだけシンプルに。
目的:複雑さを排除し、理解しやすく保守しやすくする。
使いどころ:複雑な設計をしていると感じたとき、一度シンプル化の余地を見直す。
3. YAGNI(You Aren’t Gonna Need It)
定義:将来必要になるかもしれない機能は今作らない。
目的:過剰設計を避け、必要なものだけに集中する。
使いどころ:未来の要件を予測して実装しそうなときに、一歩立ち止まる。
4. SOLID原則(5つのOOP原則)
定義:オブジェクト指向設計の5つの基本原則。
- S:単一責任の原則(SRP)
- O:開放閉鎖の原則(OCP)
- L:リスコフの置換原則(LSP)
- I:インターフェース分離の原則(ISP)
- D:依存性逆転の原則(DIP)
目的:拡張性と保守性の高いオブジェクト指向設計を実現する。
使いどころ:大規模なOOP設計や複雑なビジネスロジックの整理に。
5. デザイン・バイ・コントラクト(Design by Contract)
定義:呼び出し元と呼び出される側で「契約」を明示し、それに基づいて設計する。
目的:仕様の明確化とバグの防止。
使いどころ:API設計や外部とのやりとりがあるモジュールなど。
6. フェイルファスト(Fail Fast)
定義:不正な状態はすぐに検出し、早期に失敗させる。
目的:不具合を早期に見つけやすくし、影響範囲を最小に抑える。
使いどころ:入力バリデーション、内部整合性のチェックなど。
設計原則を適用する際のヒント
- 原則同士が矛盾することもある:たとえば、DRYとYAGNIは時にトレードオフになる。バランス感覚が重要。
- すべてを最初から守ろうとしない:原則は「気づき」のためのヒント。意識することから始めれば十分。
- チームで共有することが大切:個人の美学で終わらせず、設計の共通言語として使う。
まとめ:設計原則は「正解」ではなく「道しるべ」
設計原則は万能なルールではなく、プロジェクトや状況に応じて選び、調整して使う「道しるべ」です。
一つひとつの原則の背景や意図を理解したうえで、自分たちの文脈に合った形で活用していくことが、良い設計への第一歩となります。

編集部