なぜ「設計=思考」なのか?コードを書く前に考えるべきこと
設計は図や文書を書くことではなく、思考そのものです。本記事では「設計=思考」と捉える理由と、ソフトウェア開発における設計力の本質を解説します。
「設計」と聞くと、図を書くこと、文書を書くこと、アーキテクチャを決めること――
そんなイメージを持っていませんか?
しかし、本質的な設計とは、コードを書く前に何を・なぜ・どう作るかを考えるという“思考”そのものです。
本記事では、設計が単なる手法ではなく「思考のプロセス」である理由と、その実践のヒントを解説します。
設計とは「考えること」である
設計とは、「何をどう作るか」を決める行為です。
言い換えれば、「課題に対する最適な構造を見出す」ための思考プロセスです。
- 要件を理解する
- 制約を整理する
- 構造を分解・整理する
- 必要に応じて抽象化する
これらはすべて、「考えること」であり、図や記法はそれを外化する手段に過ぎません。
「図を書く=設計」ではない
図を書くことは設計を助けますが、それ自体が設計ではありません。
よくある誤解として、
-
クラス図を書いたから設計した
-
シーケンス図を作ったから設計完了
-
フレームワークを選定したから設計できた
といった「形式先行」があります。
⚠️ 設計の本質は、形ではなく「意味と構造」を捉えることです。
ツールや図はあくまで“補助輪”にすぎません。
設計と思考の一致がもたらすもの
1. 曖昧な要件を明確にできる
設計を「図を書くこと」と思っていると、言われた通りの構造を書いて終わりになりがちです。
しかし、思考として設計を捉えると、「この要件の背景は?」「本当に必要?」と一歩踏み込む姿勢が生まれます。
2. 最適な粒度と責務を選べる
モジュールや関数の分割も、「どこで切るか?」「どこまで抽象化するか?」は思考の問題です。
設計=思考であれば、それをコードの意味に即して判断できるようになります。
3. 設計力が“思考力”として鍛えられる
経験を積めば積むほど、「このパターンはこの構造が向いている」といった直観的な判断力が磨かれていきます。
これは“思考パターンの蓄積”であり、設計=思考であることの証明です。
「設計=図面」の時代からの脱却
かつては、大規模システムを「上から順に固める」ウォーターフォール型が主流でした。
そのため設計=文書・図という認識が定着しました。
しかしアジャイル、Lean、モダンOOP、関数型などの文脈では、「設計はコードと一体化し、進化し続けるもの」という考え方が主流です。
設計を思考として鍛えるためのヒント
実践 | ポイント |
---|---|
話す | 実装前に「何をどう作るか」を言語化する習慣 |
書く | 構造や選択肢を文章やメモでアウトプットする |
問う | 「なぜこの構造なのか?」を自分に問い続ける |
省く | 「いま考えなくていいこと」を切り捨てる思考 |
まとめ:「考えることをやめた瞬間に、設計は終わる」
設計は、ソフトウェアを形にするための思考そのものです。
ツールや手法に頼る前に、「いま自分は何を考え、どう判断しようとしているのか?」を意識すること。
- 設計とは思考である
- 思考とは設計である
この等式を胸に刻むことが、設計力を根底から高める一歩になります。

編集部